Tunaboni CollectionsはオリジナルドラマCDのレーベルです。

【Whiteday in Rose】

ホワイトデースペシャルSS「KIRA・KIRA_Vol.3流星編」




『倍返しとは、贈り物などを受領した際にそのお礼として、その倍額に相当する金品を贈答することである。
上記本来の意味から転じて『お礼参り』などと同様に、復讐の意味合いとして用いられることが多い』(コトバンクより)

うわぁ……なんて物騒な解説。
彼のことだから自分が言った『倍返しする』という言葉は絶対覚えてると思う。
バレンタインデーは彼のリクエストに従い………えーと、あのー……口移し……でチョコを食べさせるという羞恥プレイをさせられたことはまだ記憶に新しい。
(食べ物で遊んじゃいけません!)

そういうわけで朝からハラハラしていたわけだが、昼頃に「5時くらいから始めようか?」とラインが来た。
ふーむ。ホワイトデーとは始めるものなのか。
「何か必要なものがあるなら買っていくよ」と返すと
「俺への愛だけでいいよ」ときた。
……コレ、どんな顔して打ってるのよ(知ってる、涼しい顔だよ)

そういうわけで約束の時間に手ぶらで彼の部屋に赴いた。
「来たよ」
「いらっしゃい」
部屋を見渡してみたが特に怪しい仕掛けは見当たらず……普通にご飯を食べさせてくれるだけ、かな?
それだっていつもとても嬉しいけど。

「お腹空いてる?」
「?ううん、まだ5時だもの。そんなに空いてないよ」
「じゃ、早速風呂に入ってもらおうか」
「えっ」
「今日は、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーだから」
「え、あの、意味がわかんない」
「まぁまぁ、いいからおいで」

バスルームに引っ張られていくと馥郁とした芳香が漂っていた。
その芳香は銀色に輝く1立方メートルほどの謎の物体から出ているものらしく。
「……あの……これは何……?」
「家庭用スチームサウナボックスだね。折りたためるヤツ」
「買ったの!?」
「うん、買った。俺は今までも『健康』にはかなり関心があった」
「……まぁ製薬会社にいたもんね」
「あなたと出逢ってからそこに『美容』が追加されたわけ。実は今日初めて使うんだ。……服を脱いでこのタオルを巻いて中に入ってみてよ」
「……ちょっ、私で実験したいだけなんじゃ……」
「失敬だな。いいから入りなよ」
理系男子~~~~!

結論から言うと案外悪くないものだった。仕込まれていたローズオイルの量もちょうどよくて、ふんわりとリラックスしてくる。
「汗かいてきたね。これ飲んでみて」
とグラスを手にして流星がやってきた。
「これは何ですか」
「スム―ジー。美味しくできてるよ」
作ったの?という言葉は飲み込んだ。流星だもの、自分で作るに決まってる。

「で、使い心地はどう?」
「……ごめん。悪くないんだけど……ひとりだと退屈……」
そう言うと、ハッとした顔になる。
「しまった。俺としたことが……歌でも歌ってやろうか?」
「……聞きたい気もするけど、絵づら的にシュールだから遠慮するよ」
「テレビかタブレットが必要だったな。今後はそうしよう」
そうして銀色ボックスからようやく(?)私は解放された。

シャワーを使い、部屋着(だぶだぶ)を借りてリビングに向かうと、予想どおりの光景が目の前に広がっていた。
「お料理でテーブルが見えない……」
「サウナで最大限にすきっ腹になってもらおうと思ったんだ。足りなかったら追加する」
「大丈夫、倍返しありがとう」
「食べ終わったら足つぼをやろうか?」
「いやいやいや、大丈夫だから。ホントにありがとう」

スパークリングワインを開けて乾杯。
毎回何かとからかわれているのは否めないのだが、着地点はいつもここになる。
仕事の話や世間話をしながらふたりで美味しいご飯を食べる。
この時間がとにかく幸せだ。

しばらくして酔いが回ってきたらしい流星がつぶやいた。
「……結局まだ同棲してくれないね。何が問題なの?」
……同棲の話はかなり以前に提案されていたのだけれど、実行には至っていない(★)
同棲をしたら否が応でも「その先の未来」を意識することになる。その覚悟を決める暇もない、という感じかな。
仕事が忙しすぎる。
でも仕事はすごく楽しい。面白い。
「あなたはそういう人だよね……だから惹かれたんだ」

流星は隣に座りなおして、私の頭を肩にもたせかけた。
「……俺はあなたをサポートしていく。あなたの背中が小さく丸まってる時は伸ばしてあげる」
うん。
「美味しいものを食べさせて元気な細胞を増やしてあげる」
うん。
「忘れないで。俺が側にいることを」
「忘れたこと無いよ?」
そーかな~と渋い顔をする。
「……『仕事とアタシ、どっちが大切なのっ、ムキーっ』てなっちゃう残念な女性の気持ちがわかってきた」
「絶対うそ」
「うん、嘘。どっちも大事なんでしょ。あなたはそれでいい……」

小さいキスが唇に落とされた。おや、と流星が驚いている。
「バラの香りがする」
「おかげさまで。全身匂うよ」
「シーツにもその香りを移してくれるんでしょ?」
「……まぁ……そうなるのかな」
「うわぁ……倍返しの倍返しをされるのか……」
「何それ(笑)」
「じゃあ、早速美味しくいただきます」

そうして、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーはバラの香りで締めくくられた。


(了)