Tunaboni CollectionsはオリジナルドラマCDのレーベルです。

【バレンタインデー前のとある休日のお話】

mariageシリーズ&KIRA・KIRAシリーズ「バレンタイン・スペシャルSS」




1.その日、某デパートのバレンタイン特設会場では一軒の店の前に人々が行列を成していた。

宇佐美晃「ああ、全然試食が足りない。奥さーん、ほうじ茶チョコ、刻んでおいてください」
晃の妻「あと二箱しかないですよ、どうします?」
宇佐美晃「うっそー……じゃあ、ほうじ茶は完売の札を出しときましょう」
晃の妻「晃さんよかったですね。新作が大人気ですね!」
宇佐美晃「……うっ……今はそれどころじゃないのでちょっとだけ封印してくださいね」
晃の妻「?何をですか」
宇佐美晃「あなたのそのふにゃら~っとした笑顔です。一瞬盛りそうになったんですよ。心臓に悪い。ささ、お仕事お仕事」
晃の妻「……そっちこそ心臓に悪いですよ!」



2.その会場を歩く諏訪心月と真行寺司。

諏訪心月「へぇ、大盛況だなぁ。司、どこのチョコレートならうちの嫁さんが喜ぶと思う?」
真行寺司「……みーくん相変わらずだね。自分がチョコレートを贈っちゃうんだね」
諏訪心月「もともとバレンタインはそういうものだ。司、男は待ちの姿勢じゃダメなんだ。こっちからガツーンと行かないと」
真行寺司「……あー……。奥さんに同情する。相当ガツンガツンされたんだろうな……」
諏訪心月「なんだと?もうコロッケ買ってやんないよ?……それよりおまえ、彼女とはどうなの」
真行寺司「彼女じゃなくて婚約者ね。おかげ様で順調ですが」
諏訪心月「そうなんだ。一緒に連れてくればよかったのに」
真行寺司「嫌だよ、休日に上司に会わせるの可哀想じゃん。そっちこそ奥さんはどうしたの」
諏訪心月「今、ちびたちを連れて実家に遊びに行ってる。ヒマだから司と遊んでやろうと思って」
真行寺司「えっ、本当は逃げられたんじゃないの?それで寂しくなって俺を呼び出したとか?」
諏訪心月「……おまえ、絶対に許さない」
真行寺司「こんなに大人げのない人がCEOって……ルッチキーオの未来が心配だよ……」


3.その頃の樋口家。

樋口涼「ひよこ。2/14は外に食べに行こう」
涼の妻「別にいいですけど……この日はいつも私の料理を食べてくれてるのにな……」
樋口涼「……ああ。バレンタインのおまえの独創的な料理は楽しみなんだ。でもトキメキすぎて心臓に悪いことがわかってきた」
涼の妻「だったら尚更がんばりますよ。今度は何に入れようかな?チョコレート」
樋口涼「……やっぱりわざとやってたんだな?」
涼の妻「ううん、最初のは大真面目でしたよ? でも今ははっちゃけぶりを期待されている気がするんです。違います?」
樋口涼「……なんてことだ。ひよこが俺に似てきてしまった……」
涼の妻「仲良し夫婦は似てくるらしいですね」
樋口涼「……ぴよぴよぴよぴよ。ホントだ!俺までとうとうひよこに!?」
涼の妻「wwwww」
樋口涼「……おい大丈夫か? ちょっと笑いすぎだぞ?」

※経験値の差で涼の勝ち


4.再びバレンタイン会場。

ティト「ワオ。チョコレート売り場がすごいね、あそこにも待機列ができてる。最後の人は最後尾カードを持たないのかなぁ?」
ティトの妻「……ティトさん、いつの間にオタク文化まで覚えたの?」
ティト「SNSで見たよ。アレは秩序が素晴らしいね」
ティトの妻「検索の方向性がよくわからないよ」
ティト「時代劇はやめて最近はアニメで日本語を学んでるから。でも『無理無理無理無理』……コレはどういう時に使えばいいのかわからない」
ティトの妻「ううん、どこにも使わなくていいと思う」
ティト「ここはアモーレにあふれている場所なんだねぇ……あの女の子、あんなに沢山買ってるよ? 恋人がひとりじゃないのかな?」
ティトの妻「今のバレンタインは友だち同士や自分で楽しむ人が多いのよ。彼氏がいるいないは関係ないの」
ティト「おおう……僕の日本文化の知識はアップデートが足りないようだ。じゃあ、愛しあうカップルはどこにもいないのかな?」
ティトの妻「私たちがそうでしょ?」
ティト「! 確かにそうだよ。僕たちがこの中で一番愛し合ってるよ!この幸せをみんなに分けてあげたいよ」
ティトの妻「……うーん……ティトさんてホントぶれない……」


5.再び宇佐美家の店前。

峯岸達己「あー、やっと順番が来た。すみません、ほうじ茶の生チョコをひとつと、」
宇佐美晃「申し訳ありません。ほうじ茶は完売してしまいまして……」
達己の妻「あらー……たっちゃん、またやっちゃったねぇ」
峯岸達己「本当だな。俺たちいつもこうだな、あはは、困っちゃうねぇ」
宇佐美晃「……本当に申し訳ありません。(この人たちまったりして和むなぁ)」
峯岸達己「じゃあ、この抹茶トリュフの試食、いいですか」
宇佐美晃「勿論どうぞ。お試しください」
峯岸達己「ほら、口開けてみ。あーん……どう?」
達己の妻「!!」
峯岸達己「美味しいんだ。じゃあコレもらおうか?」
達己の妻「(無言でうなずく)」
峯岸達己「じゃあ、抹茶トリュフを2つ、和紅茶の生チョコを2つ……じゃなくて3つずつがいいんだよね?」
達己の妻「(無言でうなずく)」
宇佐美晃「!? (彼女が言葉を発してないのに、完全に読み取っている!)」
宇佐美晃「(どういうことだ……表情だけでわかるのか……?)」
峯岸達己「ん? 何か?」
宇佐美晃「いえいえ、何でもないです。どうもありがとうございます(熟練の技を見せていただけて)」


6.その頃の佐々木陽と妻。
.
佐々木陽「もしもーし。連絡遅くなってゴメン。やっとホテルに到着したよ。凍えるかと思った」
陽の妻「陽ちゃんお疲れ。アラスカはどう?」
佐々木陽「こっちはものすごく寒い。部屋もまだあったまってないし……アレ、おまえ今どこにいるの?」
陽の妻「デパートでいろいろ見てた。フェア限定のチョコレートアイスが美味しそうだから買っておくね」
佐々木陽「……う……アイスというワードがたまらなく寒い………おまえがいるところはあったかいんだな……」
陽の妻「ありゃっ、ゴメン!」
佐々木陽「別にいいよ。……よし、帰ったらおまえと一緒に風呂でじっくりあったまる。決めたぞ」
陽の妻「うんうん、そうして」
佐々木陽「それで、ぬくぬくしながらベッドの中でチョコレートアイスを食おう」
陽の妻「おー、いいねぇ。アメリカ映画みたいだね」
佐々木陽「……それで、あんなことやこんなことをして、」
陽の妻「陽ちゃん?」
佐々木陽「……ついでに、指やら舌やらで、」
陽の妻「陽ちゃん?」
佐々木陽「………早くおまえに会いたい……」
陽の妻「……陽ちゃん、がんばって……!」


7.また宇佐美家の店前。

月村海「えーと……抹茶の生チョコ2つ、和紅茶の生チョコを3つ、あと、このお茶の葉タブレットを……んーーー5つ!」
宇佐美晃「はい。こちらはご贈答用ですか?」
海の妻「いえ、この人が全部食べます」
月村海「もーおんちゃん、そんなこと、知らない人にバラさなくていいのにぃ~」
海の妻「ふふ、ごめんごめん」
月村海「俺、すっごい甘党なんです。今日のフェア楽しみにしてたんですよ~、あっちの店でも、○▽■で、」
宇佐美晃「ああ、それはいいですねぇ……(うん、この人たちも和む……)」
海の妻「アレ。……カイ、ほっぺにココアの粉ついちゃってるよ。ちょっとこっち向いて」
宇佐美晃「!?」
月村海「ちょ、おんちゃん、恥ずかしいよ。自分でやるってば」
海の妻「だって自分じゃ見れないでしょ?」
月村海「大丈夫だってば。……あっ、すみません、おいくらですか?」
宇佐美晃「……(うんうん、これもまたひとつの愛の形……)」
月村海「あのぅ??」
宇佐美晃「はっ! すみません、お会計ですよね! 少々お待ちくださいね!」


8.同デパートの別の階にいる高城流星と彼女。
.
流星の彼女「流星、バレンタインの会場に行かない?」
高城流星「いや、さっきCEOを見かけたから、まだ行かない方がいいと思うよ」
流星の彼女「? 別に挨拶くらいしてもいいんじゃない?」
高城流星「ちがうって。捕まったら飲みに連れていかれそうだから避けてんの」
流星の彼女「まさか。いくら何でもこんな昼から飲まないでしょ?」
高城流星「はー……あなたは知らないんだねぇ……プライベートのCEOを……」
流星の彼女「流星、遠い目をしてる……」
高城流星「ってゆーか、俺へのチョコレートを買うつもり?」
流星の彼女「ううん、職場で配る用」
高城流星「俺用は?」
流星の彼女「勿論考えてるよ」
高城流星「ほーお……それはそれは。倍返しを楽しみにしてて」
流星の彼女「……お、お手柔らかにお願いします……!」


9.その頃の大須賀壮吾と壮吾の彼女。

大須賀壮吾「はい、女優さんから貰ったチョコ。ちょろすけにあげるよ」
壮吾の彼女「あらーずいぶん早めにもらったんですね。ズバリ本命じゃないってことですね!」
大須賀壮吾「……あからさまに嬉しそうな顔してるぞ」
壮吾の彼女「私からのは本命ですよ」
大須賀壮吾「おまえからのチョコが義理だったら絶望するわ」
壮吾の彼女「一緒に食べましょうね」
大須賀壮吾「?自分が食べたいチョコを買ったの?」
壮吾の彼女「……ちがいますよ。やはり広告に携わるものとしてはトレンドに乗るべきだと思いまして」
大須賀壮吾「……いやな予感しかしない……」
壮吾の彼女「大丈夫です!私を信じましょう!」
大須賀壮吾「…………」

※彼女がどんなチョコレートを買ったのか壮吾以外知る由もない


(おまけ)
会場で取材をしていた某テレビスタッフ。

インタビュア「……ね、去年インタビューしたあの人たちがいたわ。お客さんにもいたよ? どういうめぐり合わせなんだろうね?」
カメラマン「……やっぱおまえだな」
インタビュア「何?」
カメラマン「……おまえのいちゃいちゃへの欲求があの人らを呼び寄せてんの」
インタビュア「……それって私がいちゃいちゃしたがってるって意味?」
カメラマン「まぁそんなとこだろ」
インタビュア「あんただって去年一緒にいたじゃないよ」
カメラマン「おお、確かにそうだった。俺もいちゃいちゃを欲してるのかな?」
インタビュア「あははは、早く彼女作んなよ」
カメラマン「それ、おまえが言う??……ったく鈍感な女ってタチが悪いよなぁ……」
インタビュア「……ん?なんか言った?」
カメラマン「なんでもなーい。……ほら、帰るぞーー」

(了)