Tunaboni CollectionsはオリジナルドラマCDのレーベルです。

【甘苦ショッピング】(達己編)

mariageわんにゃん発売記念ショートストーリー




-たっちゃん、デパートにつきあってもらえるかな?
「いいけど。何を買うの?」
聞けば営業所の男性社員宛てのチョコレートの手配を頼まれたと言う。
気前のいい所長から『福利厚生費から出すからちょっといいものにして』とリクエストされたとのこと。
峯岸さんは美味しいものを知ってそうだから、と言われたらしい。
「それ微妙にプレッシャーだね」そうなの、と不安げなおまえ。
よし、そういうことなら我が家の威信にかけて選んでみましょう、ということでデパートのバレンタイン特設会場に赴いた。

熱気が凄まじい会場の人波を縫うように歩く。
奥さんは明らかに多種多様の商品に目移りしている模様。うんうん、想定内。
その中で日本初上陸らしいチョコレートに目星をつける。
「ひとつ買って味見をしてみようか?」と言うと、ぶんぶんうなずく。
やっぱり自分が食べたいんだよね?うん、それも想定内。

休憩所のベンチで買ったばかりの箱を開けてみる。
プラスチックチョコレートというのだろうか、鮮やかな色彩が工芸品のようだ。
食べるのが惜しくなるが、そこは画像で保存するということで、パシャリ。
-すごく美味しいね
「うん、美味しいね」
幸せの甘いもぐもぐタイムにふたりの顔がほころんだ。

これにしよう、と決めて会場に戻るとその売場に人だかりが出来ている。
「うわ、すっごい混んでる!日本初上陸だから?」
-さっきはこんなに混んでなかったのに!

……そしてその結果。
予算内の品物は人数分の確保ができないことがわかり、峯岸家は敗退、涙を飲んでほどほどの品物を手に入れたのだった。
次の試合(?)はがんばります!  

(了)


【試されるチョコレート】(涼編)




今日はバレンタインデーというとてもめでたい日だが、就業時刻が過ぎたにもかかわらず嫁が帰ろうとしない。
「おまえ抱えてる仕事があるの?」と尋ねると、いいえと首を横に振る。
なんだろう……あ、もしかして。
「わかった、俺宛にチョコレートを用意してなかったんだろ。いいぞ、気にしなくても」
そう言ってもその表情は晴れない。

「そうだな、とりあえずチョコペンを用意してくれればいい」
-?どういう意味ですか?
「おまえの全身にチョコペンで絵を描いてだな、それを俺が舌で」
-涼さん、やめて?……ちゃんとチョコレートはあるんですよ
「じゃ、何を悩んでるんだよ」
-ちょっとしたコラボを思いついて……実行したんですけど、なんだか失敗作のような気がして
「どういうこと?」
-涼さんハンバーグ好きでしょ?で、今朝下ごしらえしてきました
「おう、いいねぇ。それに何の問題があるの?」
-……チーズの代わりにホワイトチョコを真ん中に入れたんですよ……よくよく考えるとどうなのかなって
「え」

ひよこは申し訳なさそうな顔で俺をじっと見ている。
-でも、美味しい可能性も否定できないんです。チョコトンカツなるものも世の中には存在するらしいので……
「へ、へぇー……」
-作っちゃっていいですか?

ひよこの飽くなき探究心。そこは褒めてやらねばならん。だが。
……俺は愛を試されている
さあ、どうする樋口涼!                  

(了)